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- 書籍「ユニコーン企業のひみつ」の内容が知りたい
- スタートアップの働き方が知りたい
- スピード感のある組織づくりが知りたい
- Spotifyの考え方が知りたい
大企業(エンタープライズ企業)をスタートアップ企業が追い抜いていくことがあります。
Spotifyもその1つです。音楽配信サービスで世界で多くの人に利用されています。
なぜここまで急速に成長できたのでしょうか?組織や開発プロセスにひみつがあります。
「ユニコーン企業のひみつ」を余すことなく紹介します。
ユニコーン企業とは、評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業を指します。
「創業10年以内」「評価額10億ドル以上」「未上場」「テクノロジー企業」といった4つの条件を兼ね備えた企業です。
参考:ユニコーン企業のひみつ
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ユニコーン企業のひみつ 1章要約:スタートアップはどこが違うか。まとめ。

スタートアップは「火星」から来た
スタートアップは、スケジュールや納期ではなく、顧客、インパクト、学習を重視します。
常連客も定期収入もないため、迅速に成長する必要があります。
また、資金を調達したなら、早々に価値を示す必要に迫られます。価値とはプロダクト(商品・サービス)です。
プロダクトマーケットフィットとは、適切な市場に向けた最適なプロダクトを見つけ出すこと。これこそスタートアップが探し求めているものです。
これを見つければ勝てます。
学習する機械
スタートアップが重視しているのは、スピード以上に学習です。
とくにイテレーションを重ねることが重要。イテレーションは「開発し、計測・分析した結果から得た知見をプロダクトにフィードバックする」を繰り返すことです。
イテレーションを繰り返すことで、ゴール(目的)へと近づきます。
これを実践するためにメンバー全員が自分で考えることが大切で、そのための権限を与えましょう。
- 実験して学ぶ
- プロダクトマーケットフィットに向けて調整する
- 投資家に価値を示す
- 自分たちが変な方向に進んでないことを、自分たちで確認する
エンタープライズ企業は「金星」から来た
スタートアップとエンタープライズ企業では、アプローチが異なります。
スタートアップはイテレーションを繰り返し、価値を創造するのに対して、エンタープライズ企業は社内の自動化、効率化を重視します。
よってマネジメントが重視されます。管理して効率を上げる人が重宝されます。
とはいえエンタープライズ企業も、スタートアップが同じ領域に参入を続けているため、新しいプロダクトを考えていく必要があります。
しかし、エンタープライズ企業はスピードやペースが慣れてないので、スタートアップの方が有利な場合があります。
エンタープライズ企業が犯す2つの過ち
- プロダクト開発を社内業務システム開発と同じように扱ってしまう
- チームに十分な自律性と信頼を与えていない
期待に応じる機械
スタートアップとエンタープライズの違い
エンタープライズ | スタートアップ |
---|---|
内向き(社内に目が行きやすい) | 外向き(顧客に目を向けている) |
計画に従う | 学習する |
既存業務の自動化 | 新規プロダクト開発 |
未知が少ない | 未知が多い |
プロジェクト駆動 | プロダクト駆動 |
一回のリリース | リリースを重ねていく |
納期と予算 | 顧客とインパクト |
トップダウン | ボトムアップ |
弱い権限と信頼 | 強い権限と信頼 |
計画に忠実 | 計画を生み出す |
これは優劣ではなく、それぞれのアプローチが違うだけです。
かつてスタートアップだった企業も大きくなるにつれて、小回りが効かないエンタープライズ企業になってしまう場合があります。
うまくいっているユニコーン企業は、自分たちのチームを小さなスタートアップのように運営しながら、同時にエンタープライズ企業のような規模の経済性も獲得しています。
つまり、こういうことだ
ここまでのまとめ。
- 成功を再定義する
- 計画に従うことが成功ではない。イテレーションを繰り返し、発見と学習を繰り返すことが成功。
- 学習とは何であるかを心得る
- 実験と学習にフォーカスする。
- 未知の状況でもうまくやっていける人を探す
- 待っていても誰も来ない。自ら探しに行く。
- 失敗してはいけないという思い込みを払しょくする
- プロダクトは一発勝負ではない。初回のリリースは始まりに過ぎない。
- 権限を与え、信頼することで仕事をやり遂げる
- すごいプロダクトを作るには強い権限が与えられている、信頼されたチーム。
Think Different
スタートアップは「学習する機械」です。学習、実験、発見を大切にする。
彼らは、チームに権限と自律を与えるための「ミッション」を大事にする。
ユニコーン企業のひみつ 2章要約:ミッションで目的を与える。まとめ。

プロジェクトの問題点
プロジェクトは、計画を進めるには適した手法です。しかし、新しいものを作るのにはあまり向いていません。
プロジェクトの問題点
- プロジェクトは期間が短い
- プロジェクトの定義により始まりと終わりがある。
- フィードバックの機会がない
- リリースしたら終わり。フィードバックをすることがない。
- プロジェクトはあまりにも融通が効かない
- ゴールが用意されているので、そこに一直線に向かう。新しい知見を取り入れる余地がない。
- プロジェクトは力を奪う
- 納期や予算のせいで、メンバーが自ら考える時間がない。
- プロジェクトは間違ったことにフォーカスしている
- プロジェクトは納期や予算を大事にする。
これが「ミッション」だ
ミッションとは、チームに与えられる抽象度が高めの目標です。
- 仕事の方向づけ
- 目的の提供
- 長期的な視野
- どうやって果たすかはチームが決める
例えば、Googleの目標は「世界の情報を整理すること」。
Spotifyのミッションは「新しい音楽を簡単に見つけられるようにする」「リビングルームを制する」「朝の通勤のお供になる」です。
ミッションはチームの自発性を高める
ミッションは従業員を従わせるのではなく、自らの頭で考えて行動させるものです。
これにより当事者意識を高めます。
ミッションは目的を意識させる
目的はとても大事です。目標を達成することで、誰かの暮らしの役に立つ。それがあなたの仕事を有意義なものにします。
ミッションは仕事そのものにフォーカスさせる
イテレーションを重ね、メンテナンスするのは自分たちです。時間をかけて培った経験や知恵をプロダクトに還元していく。
予算や納期ではなく、ミッションに向かう途中の仕事が価値を生みます。
プロジェクト | ミッション |
---|---|
予算がある | チームの人数が予算 |
終わりがある | 期間に定めがない |
短期間 | 長期間 |
プロジェクトマネージャがいる | プロジェクトマネージャがいない |
開発だけして引き継ぐ | 開発もメンテナンスもする |
完成したら解散する | チームは一緒のまま |
計画にフォーカス | 顧客にフォーカス |
期待に応じることが価値 | インパクトが価値 |
トップダウン | ボトムアップ |
ミッションの例
車の中で音楽を聞きやすくるチームのミッション
- スクワッド名:デロリアン
- ミッション:車の中での音楽体験を史上最高にする
- どうやって:朝の通勤時間帯のシェアで圧倒する。主要な自動車メーカーをサポートする。
- バックログ(未着手のタスクリスト):BMW連携のバグ修正、テスラ向けのフィーチャーフラグ(※フィーチャーフラグについては後述します)
プロジェクトはない
「デロリアン」は、プロジェクトも予算もありません。
バックログを整理し、優先順位をつけ、ミッションを達成するために最善を尽くします。
イテレーションを重ね続ける
継続的に見直し、ユーザ体験を改善していきます。
チームがバックログを持つ
どうやってミッションを達成するかを決めるはチームです。自分たちで考え仕事を生み出します。
ユニコーン企業のひみつ 3章要約:スクワッドに権原を与える。まとめ。

Spotifyでは、少人数の自立した、必要な権限を持ったチームをスクワッド(Squad)と読んでいます。
スクワッドとは?
スクワッドとは、少人数で職能横断の自己組織化されたチームです。8名以下で構成されます。
自分たちが作ったプロダクトの隅々まですべてに責任を持ちます。
スクワッドとエンタープライズ企業のアジャイルチームと違うのは、与えられている権限と信頼です。
ポイント
- 作ったものを自分たちでメンテンナスする
- 自分たちで自分たちの仕事を生み出す(自分たちで優先順位をつける)
- 計画よりもインパクトを重視する(新規登録数や月間アクティブユーザ)
- 準備ができ次第リリースする
- 手を動かす人だけで構成される(プロジェクトマネージャとスクラムマスターはいない)
- 権限を持った小さな職能横断チームこそが、高速なプロダクト開発とイノベーションの基盤
ユニコーン企業では頼りにされる存在が2つあります。プロダクトマネージャとデータサイエンティストです。
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーはスクワッドが「何をするか」を導くことに責任を持ちます。
戦略を定義し、ロードマップを策定し、機能の定義を考えます。マーケティング、売上予測、損益計算の責任にも何かしらの関わりを持ちます。
人物像
- 技術に明るい
- プロダクトセンスにすぐれている
- 強いリーダーシップと交渉スキルを備えている
データサイエンティスト
データサイエンティストは数学者であり、エンジニアです。チームがデータを使ってプロダクトの意思決定を下せるように支援します。
Spotifyの場合
- 収集するメトリクスを決定する
- さまざまな形式のデータフォーマットを揃えてクリーンアップする
- ベストプラクティスを適用したり命名規則を整える
- 何を検証すべきかについて仮設を立てる
- 結果が統計的に有意であるかを判断する
- データを分析する
- レポート、サマリー、ダッシュボードなど、可視化の設定をする
分離されたアーキテクチャ
分離されたアーキテクチャとは、アプリケーションのさまざまな部分同士がお互いにほとんど依存していないアーキテクチャのことです。
Spotifyでは、プレイリスト、再生コントロール、レコメンデーション(顧客へ曲のおすすめ)を分割し、お互いに影響がない(依存しない)組織になっています。
- 複数チームが並行して同じプロダクトに取り組める
- リリースを分離できる
- メンテナンスが容易になる
- 爆発半径を抑えられる(不具合が起きても全体に影響しない)
自律、権限、信頼
権限付与と信頼がなければ、スクワッド制はうまくいきません。
チームに自分たちで決定してもらいたい、当事者意識をもってもらいたい。
テック企業は優秀な人を雇っているのではなく、優秀な人をつくっている。やりがいのある仕事を与えて、遂行できるだけの権限を与えます。
失敗したらサポートし、そうやって人を育てます。
経営リーダーのためのヒント
自分のチームに取り入れていくためのヒントです。
- チームに発奮興起してもらおう
- チームに時間の余裕と探索範囲の余地を与えて、自分たちで考えられるようにする
- チームに間違えてもらおう
- ミスしても再調整するように伝える
- 間違えても大丈夫。チームを信頼している。というメッセージになる
- 間違えに備えよう
- うまくいかない場合を想定して備える。逆にチームの提案が自分の想像を越える可能性もある
- どちらにしても学びがある
- 楽しい名前を選んでもらおう
- 自分たちで名前を決めることで、それがアイデンティティになる
- 例)デロリアン
ユニコーン企業のひみつ 4章要約:トライブでスケールさせる。まとめ。

トライブ、チャプター、ギルドといった単位のチーム編成について説明します。
スケーリングの課題
スケーリング(規模の拡大)は、課題のひとつです。急速な成長と人材採用が求められます。
拡大により、組織の動きが遅くなってしまうのは避けたいところ。
小さいチームのままスタートアップのように働きながらも、企業規模の拡大と成長による効率性、影響力を獲得できるのが理想です。
そのためにメンバーをトライブ、チャプター、ギルドという単位で構成しました。
スケーリングの原則
トライブの原則
- スクワッド第一
- Spotifyは高パフォーマンスなスクワッドを育てることを第一に考えている
- サーバントリーダー
- メンバーやチームの成長と健全性にフォーカスするリーダー(サーバントリーダー)を重視している
- ミッションが肝心
- 明確なミッションを持つ、トライブはその達成に責任がある
- ミッション特化のフルスタック構成
- ミッション達成に向けた、実験、学習、実行に必要なスキルがそべて備わっている必要がある
- 人数は重要
- トライブの下限は40人、上限は150人
- トライブ内での異動はOK
- トライブ内なら所属するスクワッドを異動しやすくする
トライブ、チャプター、ギルド

スケーリングに対応するために、Spotifyで考えたのが、トライブ、チャプター、ギルドという組織の概念です。
トライブ
トライブは、担当するミッションが類似、関連しているスクワッドがまとまったものです。
例えば決済であれば、登録、認証、支払いのスクワッドがあり、これをまとめたのがトライブ。
トライブ自体が小さい企業のようなものです。特定のビジネス領域の責任も担います。
スクワッドと同様、トライブも他のトライブとの依存を最小限にします。
それにより、自分たちだけでサービスを成長させることができます。
チャプター
チャプターは同じ専門領域を持つメンバーで構成される、トライブ内のグループです。
例えば、テスター(サービスのテストをする人)をあつめ「品質保証チャプター」とします。
そして、同じ領域のチャプターをまとめるのが「チャプターリーダー」です。
チャプターの利点はコミュニティです。専門的な領域での状況やニュースや新しい技術について話し合えます。
ギルド
ギルドは、同じ専門分野に興味のあるメンバーからなるグループです。
組織を横断して形成されます。
チャプターとは違い、ギルドは正式な組織ではありません。
そのためマネジメントやサポートはありません。しかし、気軽なので、誰でも気軽に参加できます。
例えば「iOSギルド」は、iPhone開発に興味ある人で構成され、定期的にミーティングしています。
どこで働きたい?
テック企業は規模が大きくなったとしても、頻繁に組織を改編します。
1on1(部下と上司の対話)により、自分の希望のスクワッドを聞いた。全員の希望が叶えられるわけではないが、それぞれ自分のやりたいことと一致したスクワッドに所属できる人が増えました。
意思決定をできるだけ現場に任せることが、自己組織化につながります。
Facebookでは入社してもすぐにチームには所属しません。いろんなチームを経験して、自分に合う場所を見つけます。
自分の好きな仕事をしているときこそ、最高の仕事をするものです。
スケールは大きく、チームは小さく
ポイントは次の3つ。
- トライブが関連するミッションを持ったスクワッドをまとめる
- チャプターが現場の最前線で専門的なサポートを提供する
- ギルドが全社を横断したコラボレーションを可能にする
ユニコーン企業のひみつ 5章要約:ベットで方向を揃える。まとめ。

カンパニーベット(Company Bet)を活用して、全社横断したコラボレーションしています。
しおれた百の花
Spotifyの動くスピードは十分ではありませんでした。スピードを上げるために次のことをしました。
全社レベルでフォーカスを絞るために一度に取り組むことを少なくしました。
社内ではこれを「カンパニーベット」と呼びます。
カンパニーベットとは
カンパニーベットは、会社で取り組みたい重要事項を終わらせたい順に並べたリストのことです。
- フォーカスを強制する
- まず終わらせるべき最重要事項を明確にする
- 全社横断のコラボレーションを可能にする
- 向かう方向を揃え、優先順位をつけるたのツール
ベットを最優先とし、その他はすべて後回しにします。
ベットは大きな目標であり、複数のチームの協力が必要、相対的に短期間でビジネスにインパクトを与えることが期待されるものです。
Spotifyでは全リソースの30%は常にカンパニーベットに取り組んでいる状態にしています。
カンパニーベットの仕組み
やるべきことに優先順位を付けます。
リスト例)
- ソニープレイステーション対応
- Googleクロームキャスト対応
- にっぽんじゅうりく対応
- GDPR対応
- 上場準備
四半期ごとに優先順位をつけます。
各ベットには2ページの概要をつくります。
1ページは「DIBB」です。データ(Data)、インサイト(Insight)、確信(Belief)、ベット(Bet)の頭文字をとった言葉です。
- データ:スマホで音楽を聴く人が増えている
- インサイト:スマホがデスクトップを追い越しつつある
- 確信:モバイルファースト企業になれるかで生き残れるかが決まる
- ベット:モバイル開発者を強化する、開発インフラに投資する
もう1ページで関わる人を明らかにします。
- スポンサー
- ロードマネージャー
- ステークホルダー(利害関係者)
- 成功指標
この働き方の見事なところ
ベットに向けて会社がまとまることで、利点があります。
重要なことに集中できるため、アレコレ手をつけて一度にやろうとするのを防げます。
また、社内メンバーの流動性を高めます。ベットにより自分たちの仕事を一時的に保留して、カンパニーベットを支援できます。
自分たちの時間をどう使うのかが最適なのかは自分たちで決めます。
ベットの見事なところは全社レベルで向こう方向を揃えられることです。全員が同じ方向に向かって団結している姿は驚くべきものです。
これがユニコーン企業の強さでもあります。
やり抜くためのコツ
カンパニーベットで優先度のリストを作れば、全員が同じ方向を向くわけではありません。
うまく回すためには時間も労力も必要です。
5つのコツを伝えます。
- 専任のロードマネージャーをアサインする
- ベットの担当者はロードマネージャーとして、やりとげる責任をもつ
- チームのリード、コミュニケーション、チームの調整なども行う
- 自分の部署よりも広い視野で考える
- ベットをやり遂げるために必要な他部署、別の組織の連携・調整する
- コミュニケーションプランを考える
- コミュニケーションガイドラインを作成する
- 状況の共有のタイミング、連絡先のメールグループなど
- 全員が参加している!と感じられるようにするのが重要
- 早いうちから統合する
- 外部システムと連携するような場合は、はやめに統合する
- 異なるシステムの連携はむずかしいため、問題が起きても、はやめに対処する
- 大掛かりな取り組みは時期をずらす
- 大きなベットを2つ同時進行させると高くつく
- 社内リソースが限界になると、メンバーに余裕がなくなり、残業も増える
ユニコーン企業のひみつ 6章要約:テック企業で働くということ。まとめ。

フラット化する世界
フラットな組織階層。カジュアルで能力主義の職場。肩書きや役職よりも「何をしたか」が重視されます。
新しいアイデアは共有されることが推奨され、CEOに向かって反対意見を述べてもよい。
「何をすべきか指示するつもりはないよ」
テック企業でマネジメントスタイルの転換が起きているが、なかでも重要なのは「具体的に何をすべきか指示されない」ことです。
テック企業ではやるべきことを自分で考えて、見つけ出すことが推奨されます。
お金の使い方が違う
無料ランチ、無限のスナックにフルーツやコーヒー。オフサイトミーティング(離れた場所でのミーティング)。高性能のコンピュータ。などの待遇があります。
これにも理由があり、こうした方が仕事が速く進むのです。余計なことに時間を使わず、必要なものは揃えてしまった方がいい。
「信頼してないの?」
テック企業に入社して気づくことは「いままで信頼されていなかったのか」ということです。
たとえば
- 自分のマシンに管理者権限でアクセスできない
- 特定のウェブサイトの閲覧がブロックされる
- ソーシャルメディアへのアクセスが拒否される
- 自己裁量で使える経費がない
- 開発作業中にウィルススキャンが強制実行され、生産性が下がる
テック企業は
- 開発者は自分のマシンへのフルアクセス権限がある
- すべてのチームが本番環境にアクセスできる
- 閲覧するウェブサイトに制限はない
- 好きなソーシャルメディアを自由に使える
- 好きなソフトウェアを自由にインストールできる
- 出張の旅程は自分で予約することが推奨される
- 必要なものは何でも自由に発注、購入してかまわない
これらは信頼につながります。
すべての情報は基本的にオープン
Spotifyでは基本的にすべての情報はオープンになっています。あらゆるデータにアクセスできるとき、人はすぐれた意思決定を下せます。
情報をオープンにすることで
- すぐれた意思決定ができる
- 「信頼してますよ」というシグナルの発信
- 物事を進めやすくし、しかも速くする
「手伝おうか?」
お互いをサポートしあう文化があります。隣のスクワッドが困っていれば、積極的に手伝います。
同じチームという認識があるので、あなたの問題は私の問題でもある。だから私はあなたを助ける。という考えです。
エンタープライズ企業では、手助けする場合の予算はどこの費用だ?となることもあるでしょう。
テック企業はベットにより、みんなの方向が揃っているため、積極的に協力します。
誰のプロジェクトとか、使った時間や必要の負担などを気にする必要がないのです。
テック企業流の人の動かし方
簡単にまとめると次の通りです。
- とても自律している
- とても自由度が高い
- 責任は重い
- 何をすべきかを直接指示する人はいない
- すべての情報は基本的にオープン
ユニコーン企業のひみつ 7章要約:生産性向上に投資する。まとめ。

プロダクティビティスクワッドを編成する
プロダクティビティスクワッドは、他のエンジニアリングチームを速く進めるようにすることをミッションとしたチームです。
あなたの会社に、プロダクトのリリースや開発を担当するメンバーの日々の仕事を楽にすることだを目的としたチームはいるだろうか。
テック企業には、そんなチームが何チームもあります。
チームを支援することが仕事です。たとえば
- ビルドの自動化(システム開発の一部の自動化)
- 継続的インテグレーション(統合)の基盤整備
- A/Bテスティングフレームワークの構築(サービスをテストするための仕組み)
- 本番環境へのデプロイメント、監視ツールの作成(システムをリリースしたり、監視するための仕組み)
- 新機能を簡単に追加できる基盤の用意
- トレーニングセッションの開催
- データの変換や移行
- イテレーションと学習速度の向上
彼らは、取り締まる門番ではなく、セルフサービスモデルを作り、各スクワッドが自分たち自身で支援を受けられるようにしています。
セルフサービスモデルを採用する
プロダクティビティスクワッドは、チームができることを増やし、自分たちで支援を受けられる手段を提供します。
例えば、新しいサーバが必要になった場合でも、申請は必要なく、用意された手順書に従って自分で設定できるようにします。
このおかげで、みんなが速く動けるようになります。
ハックウィークを開催する
ハックウィークは、エンジニアが通常業務をそばに置いて、自分の好きなことをできるイベントです。
Spotifyでは、年に2回、1週間という期間で開催されます。新しいアイデアを試して、メンバーにイノベーションを起こしてもらうのが狙いです。
同じようなことをGoogleでもしています。Googleでは「20%ルール」といい、業務の20%の時間を好きに使っていいことになっています。
Spotifyではハックウィークにより以下のようなものが作られました。
- 共有プレイリスト
- 音楽の新たな可視化手法
- 不安定なテストを把握するためのダッシュボード
- 会議室の地図
- ドラムの周波数を解析して曲の盛り上がりに合わせてカウベルを鳴らす
- コンパイル時間の短縮
このように余地を与えることで、イノベーションが起きます。
技術に明るいプロダクトオーナーを活用する
プロダクトオーナーは、テック企業が開発するプロダクトの背景にあるビジョンや、顧客の要求を体現する役割です。
さらに関係者が抱く期待のマネジメントや、外部ベンダーとの調整、各方面への働きかけもプロダクトオーナーの仕事です。
また、多くは元エンジニアであり、テクノロジーやデザインを熟知しており、学ぶことにも熱心です。
品質に高い期待を持つ
テック企業は、品質に関する期待が高いです。
納期や予算が厳しいエンタープライズ企業で見てきたようなプログラムでは、テック企業のレビューは通りません。
プログラムが動けばいいだけでなく、仕事としての質が求められるためです。
時間をかけてでも質は担保します。
社内オープンソースを活用する
社内オープンソースでは、社内の誰でもいつでも他のメンバーのコードをチェックアウトできます。
つまり他のプロダクトのプログラムを誰でも見ることができます。
誰が変更を提案してもかまわないし、バグ(不具合)を修正しても良いのです。
あらゆるレベルでの継続的な改善
Spotifyでのマントラは「継続的に改善すること」です。
定期的なヘルスチェックや振り返りを実施し、マネージャーはスクワッドがもっと良くなるように考えます。
ベットが終わったあとも、振り返りをし、やらかしや不備を認め、次につなげています。
フィーチャーフラグを活用する
テック企業のリリースには、フィーチャーフラグとリリーストレインが定番です。
フィーチャーフラグは、システムの機能をオンにしたりオフにしたりできることです。
オンオフにできる理由2つあります。ひとつは、未完成を機能オフの状態で統合できることと。ふたつめは、一時的にオンにしてユーザの反応を見るという実験ができることです。
リリーストレインでリリースする
リリーストレインは、完成した機能のまとまりを、あらかじめ決められた間隔で定期的にリリースすることです。
完成した機能をどんどんリリースしていくという考えです。間隔は毎日や週1会など、好きに決めます。
利点は、期限ギリギリまで詰め込もうとするストレスから開放されます。
さらに小さい単位でリリースできるので、テストが楽になります。
技術を「一級市民」として扱う
テック企業は技術を「一級市民」として扱っており、技術を効果的に活用することで速く進んでいます。
- テック企業は意図をもって生産性に投資している
- テック企業はチームを信頼して権限をもたせている
- テック企業は技術に手を抜かない。開発基盤を「一級市民」として扱っている
ユニコーン企業のひみつ 8章要約:データから学ぶ。まとめ。

どこにでもデータがある
プロダクト開発においてデータは大きな役割を果たしています。
Spotifyでいえば、月間アクティブユーザ吸う、日々の登録者数、有料プレミアムユーザ数など。これからの数字を見て日々議論がなされます。
ここから大きなカンパニーべットが生まれます。
プロダクトを計測する
顧客がアプリ内をどう遷移しているか分かると良いです。これによりプロダクトの計測ができます。
新機能をリリースしたときに使われているのか、使われていないのか。ボタンの色を変えたら押されるようになったか、ならなかったか。などがデータで分かります。
A/Bで実験する
A/Bテストとは、どのデザインがより効果的かを確認するために、企業がプロダクトを使って実施している実験のことです。
例えば、シェアボタンの配置を下部から上部に変えてみる場合に、企業側で判断せず、どちらも顧客に試してもらい結果が良い方を選びます。
また、顧客に直接コンタクトをとりプロダクトの何が好きで、何が嫌いかを聞いてみるのも有効な手段です。
そこでデータサイエンティストですよ
データサイエンティストは、データを活用し、メンバーを手助けします。
Spotifyでのデータサイエンティストは次のようなチーム支援をしています。
- 収集するメトリクス(データの種類や指標)を決定する
- データをフォーマットしてクリーンアップ(整理)する
- タグ付けとコレクションのための命名規則を考える(データ分別)
- 仮設と検証を立案する
ユニコーン企業のひみつ 9章要約:文化によって強くなる。まとめ。

会社が違えば文化も違う
テック企業といっても会社により文化は異なります。
- アップル:デザイン
- Google:エンジニアリング
- Facebook:プロダクトのリリース
- Amazon:顧客第一
- Spotify:音楽
- Netflix:スポーツチーム
- PIXAR:物語
Spotifyの文化
Spotifyから企業文化について読み解いてみます。
良い文化ってどんな感じ?
Spotifyで働くとは、次のような感じ(文化)です。
- あなたならやれるはず
- みんなのことも信じて大丈夫
- 私たちは、みんな一緒にいます
- 誰もが助けるためにいます
- 恐れることはありません
- 応援しています
- 何か必要なことはありますか?
- オープンで誠実
- 他者を尊重しましょう
- 権限があります
大事にしているのは、権限付与、信頼、安全、そしてチーム。
チームとは、協調的で、まとまりがあり、楽しく、うまく一緒に働けるものと考えています。これには「良いプロダクトは良いチームから生まれる」という信念があります。
「安全」もSpotify文化の大事な柱です。恐れず、自分のコンフォートゾーン(安全地帯)を離れて新しいことに挑戦し、どこまでやれるか確かめることを推奨しています。
良い文化は、安全、力を与えられる。現状にとらわれない。という感じです。
核となる信念
良い文化を言葉にします。
Spotifyはチームを次のような存在と考えます。
- 何者であるかよりも、何者になれるかだ
- 最も速く学んだ者が勝つ
- これはマラソンだ。短距離走じゃない。
- 強いチームは強い個性を凌駕する
- 異なる観点の衝突が大きな躍進を起こす
エンジニアリングの信念
- 慎重で思慮深い案件収集よりも、学習と実行のスピードを重視する
- イテレーションを短くするほど学習は速くなり、価値は早く実現し、品質も高まる
- 世界に誇る技術は少ないほうが、速く進める
- 権限の与えられた小さな職能横断チームが素早いプロダクト開発の基盤だ
- 強いチームは常にロックスターを打ち負かす
- 知識や実績、経験よりも、学習能力と適応能力が重要だ
- あらゆるデータにアクセスできれば、人はすぐれた意思決定を下せる
他の事例で、Amazonでも求める人物像を「Amazonのリーダーシッププリンシプル」があります。
- 顧客へのこだわり
- オーナーシップ
- 想像と単純化
- 多くの場合正しい
- 学び、そして興味を持つ
- ベストな人材を確保して育てる
- 常に高い目標を掲げる
- 広い視野で考える
- とにかく行動する
- 質素倹約
- 人々から信頼を得る
- 意見を持ち、異論を唱えたあとは、納得して力を注ぐ
- 結果を出す
スウェーデンっぽさ
Spotifyはスウェーデンが拠点の企業です。いまでは58カ国以上にオフィスがあります。
どんな文化があるか少し紹介します。
合意形成
チームを基礎とした合意で仕事を進めていくのはスウェーデン人の好みの働き方です。スウェーデン人にとってチームを組むのは自然なことです。
ボスであってボスではない
部下を助けるのがボス(上司)のしごとです。例えば1on1ミーティングは次のような内容です。
- 調子はどうですか?
- 特に問題はありませんか?
- 筆お湯なものはすべて足りていますか?
- もっと上手くやっていくにはどうするのがいいと思いますか?
- 何か手伝えることはありますか?
- 何かあればいつでも言ってください
いい感じの職場
スウェーデン人は職場でみんな仲良くすることを大切にしています。
フィーカと呼ばれるコーヒーブレイクの習慣が名物になっています。
ワークライフバランス
自分たちの生活様式を表す「ラーゴム」という言葉があります。
意味は「多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい」ということです。
仕事、人生、遊び、休暇など、どのくらいの分量が適切か迷ったときはラーゴムです。
話すよりも聞く
彼らは聞き手を好みます。会議ではメンバーの意見もしっかり聞きます。
ユニコーン企業のひみつ 10章要約:レベルを上げる。ゆきてかえりし物語。まとめ。

目的で動機づける
従業員に仕事でわくわくしてもらうためには、そもそもなぜそこで働いているかを思い出してもらうことです。
会社の目的を再認識します。
スタートアップには人を魅了する目的があります。それを思い出してみましょう。
思考は戦略的に、行動は局所的に
チームに目的が備わったら、経営リーダーが抽象度が高めの目標を設定します。
それを自分たちのべットのリストにします。
べットのリストから四半期で行うことを決めてみましょう。
プロジェクトではなくチームに投資する
予算を割り当てるのをプロジェクトではなくチームにする。これにより予算とプロジェクトの揉め事や機能不全、無駄を取り除けます。
その分、仕事やミッションに集中できます。
技術を「一級市民」として扱う
プロダクトの提供能力には、それを支えるITサービスの品質と組織構造があります。
技術を「一級市民」として扱えるようになるまでには、他のスタートアップとの競争で苦戦を強いられます。
もっとスタートアップみたいに振る舞う
- 少なくとも初期段階では、自分たちは顧客が本当にもとめているものが何かを正確に把握していないことを認める
- それを突き止める覚悟をする
- 学習と経験を特に大切にする
- 早めのリリースによる本当の顧客からの迅速なフィードバックを通じて、顧客のニーズに合うまで、プロダクトのイテレーションを継続的に重ねる
自律した小さなチームとともに
権限が与えられている自律した小さなチームこそが進むべき道です。すごいプロダクトを作るにはボトムアップが必要。
コンテキストもあわせて取り入れる
他人にインスピレーションを求めるのは良いことです。ユニコーン企業の運営を研究することからも多くを学べます。
率先垂範のリーダーシップ
あなたはいつもみんなから見られていると心得よう。
- 失敗した人を罰する?称える?
- 事態が悪化したときに、クビを突っ込みにいく?それともチームに任せる?
- チームの見積もりを信頼する?それとも上からの指示次第で見積もりを覆す?
- 昇進させるのは、あなたが話した理想を体現する人?それとも他人を踏みつけてでも仕事を終わらせる人?
権限を与え、信頼する
本書で伝えたいことは「権限を与えること」「信頼すること」です。
「言い訳」を取り除く
Spotifyが特に力を入れているのは「言い訳」を取り除くことです。
テック企業は言い訳を取り除くことで、チームにサポートと成功の機会を与えようとします。
失敗を避けることはできませんが、そうなったときもチームを攻めることはせず、反省し、もう一度挑戦させます。
この方が楽しいし、素晴らしい結果をもたらします。
最後に
あなたが働く職場がどこだろうと、自分が大きな役割を果たしています。
毎日、仕事にいきたくなるような、全力を尽くしたくなるような、自分らしくいられるような、そんな職場づくりひとりでも多くの人が成功することを願っています。
参考:ユニコーン企業のひみつ
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