
次の方を対象にしています!
- 1on1を知りたい
- 1on1の進め方を知りたい
- 他社の1on1導入事例を知りたい
- 組織やチームをよくしたい
会社やチームを成長させるために、メンバーに仕事を割当て、定時後も残業をして成果を出す。という時代から、メンバー力を最大限に引き出すことで、個が成長し、チーム・会社が成長するという時代に変わろうとしています。
テクノロージなどの進化が早く、先が読めない時代(VUCA)とも言われ、この先、大企業に入社すれば定年まで安泰ではありません。
トヨタ自動車の豊田章男社長も2019年に「終身雇用を守っていくのは難しい」と発言されています。よって、個々の力がより大事になってきます。
個人の力を引き出し、チームや会社が成長するために 1on1ミーティングを活用します。
本記事の内容
・1on1ミーティングの基礎
・1on1ミーティングの効果
・1on1ミーティングの事例
ブログや本を読むのが面倒な方は、聞き流せるAudibleがオススメ!
>> 詳細はこちら
1on1ミーティングの基礎【要約まとめ】

1on1の基礎をご紹介します。
1on1は、上司とメンバーで行うミーティングのことです。目的や進め方をご紹介します。
ヤフーの例ですが、週1回 1人 30分行っているそうです。
1on1の目的
1on1の目的は、企業ごとに決めて良いものです。
しかし、自由と言われると分からない場合もありますので、いくつかご紹介します。
1on1の目的(例)
- メンバーとの信頼関係を構築する
- メンバーの経験学習を促進する
- ホウレンソウの機会とする
- フィードバックとそこからの学びを得る
- メンバーのモチベーションを高める
- 意思決定に必要な組織の情報を得る
メンバーとの信頼関係を構築する
多くの人は「自分を理解してもらいたい」と思っています。
1on1を通してメンバーの話を聞き、相手のことを理解します。大切なのは、自分の意見を言わずに相手の話を真剣に聞くという姿勢です。
信頼は組織の成果を高めるキーワードです。
メンバーの経験学習を促進する
人の成長を決める学びの要素の比率として「7:2:1」の法則があります。

この円グラフからも分かるように、7割は仕事経験から学び、2割は他者から、1割は研修や組織から学びます。
7割は仕事経験から学ぶことに注目し、メンバーがより経験から学習して成長を促す目的として1on1を利用します。
1on1を通じて経験学習を促進できれば、業務時間のすべてが研修になります。
経験学習のサイクルは次の通りです。

「具体的経験→内省→教訓→適応」を繰り返すことで人は成長できます。
ホウレンソウの機会とする
ホウレンソウは報告・連絡・相談の頭の漢字をとった造語です。
1on1でも「今日は報告する場でもよいですか」と言わることがあります。もちろん報告の場として1on1を利用しても良いです。
これはメンバーに悩みや問題がある場合、優先して対処してしまった方が、解決後にメンバーが仕事に集中できます。
フィードバックとそこからの学びを得る
他者から見た自分が知らない自分。
周りから見て感じたことを教えることで成長につながる場合があります。
例えば、自分は、ゆっくり話しているつもりが、周りからプレゼン早口だったよね?と言われたりします。
周りから見た自分を教えることで、本人が認識し成長を促せます。
本人が気づいていないが、周りが気づいていることを伝えるのが大切です。
ただし、ネガティブなことを伝える場合は、十分気をつけましょう(傷つけず、プラスになるように)。
メンバーのモチベーションを高める
上司の役割は何でしょうか?
それは、メンバーがやる気をだしてもらい、個人と組織の成果を最大化することです。
例えば、「今週やる気がでた出来事はなんですか?」などメンバーのやる気がでるポイントを探ってみたり、良い箇所を見つけたら褒めてみましょう!
意思決定に必要な組織の情報を集める
これはメンバーへの効果ではなく、1on1をすると得られる副次的に得られるものです。
メンバーとの信頼が深まるにつれて色々な情報が入ってくるようになります。
それにより職場環境を把握し、今後の意思決定に役立つことがあります。
また、職場環境に還元することでより良い職場になります。
やる気の探り方
個人のやる気(やりたいこと)と会社が求めているものが一致したら、目的に向かって全力で進めます。
しかし、社員のやる気を表すエンゲージメントを、IBMが2014年に調べた結果、日本は31%で調査対象28ヶ国の中で最下位となりました。
(IBM the many contexts of employee engagement)
さらに、エクスペディアが行った2018年に行った「有給休暇の国際比較調査」 で、日本の有給休暇取得日数は10日、取得率は50%となり、調査対象の世界19ヶ国でも最下位でした。また、「有給休暇に罪悪感があるか?」の質問では58%が「ある」と回答し調査対象の世界19ヶ国中トップでした。
この結果を見ても日本人は「やる気が低い、休みが少ない(働きすぎ)、休みを取りづらい」という現実が見えてきます。
とても健康な状態とは言えません。
メンバーのやる気スイッチを探る

労働生産性の数式は上記の通りです。
このとき、分母に注目しがちです。残業をへらす、無駄な人材を削るなど。分母をどうにかしようと考える企業が多く存在します。
そうではなく、分子(メンバーをやる気にさせて最大の成果を上げる)をどう増やすかに注目してみましょう。
まずはメンバーのやる気スイッチを探します。
「あなたがやりがいを感じるのは、どのような瞬間ですか?」「今週やる気が出たことは何ですか?」と聞いてみると良いでしょう。
リーダーに必要なこと
ポイント
・メンバーの能力とやる気を引き出す
・メンバー同士の関係性を強める
・共通の利害と目標に向かう
心理的安全性
心理的安全性とは、エイミー・エドモンドソン教授は次のように定義しています。
チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰を与えるようなことをしないという確信を持っている状態であり、チームは対人リスクを取るのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態
心理的安全性は、メンバーが仲良くなり居心地の良い状態を意味するものではなく、意見が対立したとしても「創造的な摩擦」として歓迎される状態です。
リーダーの行動
ポイント
・直接話のできる、親しみやすい人になる
・現在持っている知識の限界を認める
・自分もよく間違うことを積極的に示す
・参加を促す
・具体的な言葉を使う
1on1の進め方
1on1に決まったやり方はありませんが、何もないと不安という方のために、一例を載せます。
- ウォームアップ
- テーマ決め
- 話を聞く
- クロージング
ウォームアップ
はじめにメンバーを労います。
例えば「昨日の会議の進行良かったよ。ありがとう。お疲れ様。」のように日頃の仕事を労います。
相手は自分のことを見てくれていると感じます。「特に資料の図が見やすかった」などフィードバックを入れることも効果的です。
テーマ決め
次に話すテーマを決めます。
上司は、「今日は何を話そうか?」と聞いてみてください。
上司は話を聞く役割なので、テーマを決めるのはメンバーです。
一個「抱えているタスクについて」などテーマが出たとしても、「他には何かないかな?」と複数聞いてみてください。
テーマが複数出たら、その中から今日話すテーマをメンバーが選びます。話す優先度を決めるのもメンバーです!
話を聞く
上司は、話を聞くことに徹します。途中で自分の意見を言いたくなりますが、我慢してください。
特に「沈黙はゴールデンタイム」であり、メンバーがしっかり考えている証拠です。沈黙になっても何も言わず相手の言葉を待ちましょう!
メンバーが考えるように、相槌とオープンクエッションを心がけます。
Yes、Noで答えられるクローズドクエッションよりも、「どう考えてますか?」のようなオープンクエッションをするのが重要です。
相手の良さを言葉にして伝えることも大切。
クロージング
1on1の最後には、次に何をするかを決めて終わります。
そのため、クロージングの時間を決めます。
「あと5分なので、そろそろ次に何をするか決めましょうか」のような感じです。
1on1ミーティングの効果【要約まとめ】

1on1をすることで、どのような効果があるのでしょうか。
1on1をしたからといって、すぐに効果がでるものではありません。
続けていく中でジワジワと効果が出てくるものです。
- 相手が考えるように1on1を終わらせる
- スッキリ1on1が終わるよりも、モヤモヤしたまま終わる方が内省する
- 短時間の1on1が成立する
- 定期的に1on1をすることで上司とメンバーで情報が共有されているため、オフィスでの立ち話のようなちょっとした時間で「アレは順調?」など。短時間で1on1が可能となる
- 振り返るようになる
- 定期的に1on1があるため、次は何を話そう?今週は何をしよう?と自分で考えるようになる
- 振り返りが習慣化される
- いい1on1は経験学習サイクルを内包する
- オープンクエッションにより「今日何を話す?」「次は何をする?」と聞いていくことで、1on1の中で経験学習サイクルを回せる
- 信頼関係がつくれる
- 苦手な人であっても定期的にコミュニケーションをとるうちに相手のことが分かってくる
- 信頼関係ができると、深い情報を交換できるようになる
また注意すべきこともあります。
- 上司が聞きたいことを聞く場ではない
- 傾聴に徹する
- 詳細を聞かない(知りたいからといって上司が聞きすぎるのは良くない。メンバーが考えるのが大切)
- 上司の意見を押し付けない
- 上司のコピー(上司に似た人間)になるのがメンバーのキャリアプランではない
- メンバーの話を聞き、一緒に探求していく
- 未知のものに対して、過去の成功例を簡単に適応しない
- 成功体験にとらわれず、捨ててでも、最適なものを探す
- 他社の成功例が自社に当てはまるとも限らない
- メンバーは勝手に育つものではない
- 「上司を見て勝手に育つ」と考える時代もあったが、メンバーが自分で考えて成長するよう手伝いをするのが上司
- メンバーのことを知っている気にならない
- 上司の勝手な想像で相手を知っているきにならず、しっかりと相手の話を聞いてみましょう(偏見・バイアスをもたない)
下図は3段階のリレーションです。土台となる信頼関係がグラグラな会社もあります。
1on1を通して、信頼を積み重ねてみましょう!

ジョハリの窓
ジョハリの窓という、心理学者のジョセフ・ルフト氏とハリントン・インガム氏によって1955年に考案された概念があります。
人の特性を4つの窓(開放の窓、盲点の窓、秘密の窓、未知の窓)に分類したものです。
メンバーの開放の窓を広げていくことが信頼関係を築くのに役立ちます。

例えば、資料作成がうまいよね。というフィードバックにより、開放の窓の領域が広がり、盲点の窓の一部が開放の窓(自分も他人も知っている自己)になる可能性があります。
気をつけるべきは、「上司 × Aさん」「上司 × Bさん」「Aさん × Bさん」と組み合わせ(心の開き方など)により見えている窓が違ってきます。
複数の窓を意識して1on1をするのも良いでしょう!
1on1ミーティングの事例【要約まとめ】

1on1を取り入れている企業が増えていますので、事例を紹介します。
パナソニック
- 組織課題
- 事業環境やビジネスモデルの変化、社員の価値観の多様性に合わせ上司とメンバーのコミュニケーションの質と量を上げていく必要がある
- なぜ1on1なのか
- A Better Dialogueが目指す「上司とメンバーとのコミュニケーションの質と量を上げる」ための最善手段であると考えられたから
- 導入時期
- 2019年
メンバー評価のために面談をしているが、上司からメンバーへの一方向な面談になっていたこと、評価する意識が全面に出ていたこと、を問題にしていました。
そこで、上司とメンバーの質と量を上げるべく、1on1の導入を決めました。
社員数も多く説明会では企業にフィットするのか、などの声もあったが、丁寧に変化の激しい時代に1on1は必要であると、20回の説明会を開催。
2020年7月時点で7割ほどが実施していて、強制はせず推奨という形にしています。
変化がある人、ない人と感じ方にバラつきはありますが、変化がある人は主に三種類に分類できたそうです。
ポイント
・業務にプラスになった(認識齟齬や期待が分かるようになった等)
・信頼関係ができた(何でも相談できるようになった)
・主体的に動くようになった
また、パナソニックソリューションテクノロジーでも1on1を実施していて、1on1の支援システムを開発したそうです。
これは1on1の予定を簡単に入れることのできるシステムで、1on1が見える化しました。
これにより1on1の予定を入れるために「上司に声をかけずらい」ということが解消されました。
パナソニックのような大企業でも上下関係の溝を埋めたり、情報を正しく共有するために1on1が有効でした。
日清食品
- 組織課題
- 営業組織が活気を失っていた。社員に成長実感を持ってほしかった
- なぜ1on1なのか
- 目標とする「成長実感カンパニー」になるには上司とメンバーのコミュニケーションが不可欠だったから
- 導入時期
- 2017年
「カップヌードル」を主力商品とした大手食品メーカーです。
売上は良かったが、ここ数年停滞感があり、営業組織の元気のなさを危惧していました。(組織として活気がないように見えた)
活気を取り戻すため、人事と議論を進める中で出てきたキーワードが「成長実感カンパニー」です。
具体的な方策として1on1をすることに決めました。上司とメンバーで対話を促進することで成長実感を持たせ、社風を刷新する狙いです。
これまでは「俺の背中を見て覚えろ」という社風のある会社でした。
「成長実感カンパニー」のあるべき姿は明瞭ではないため、リーダー層を巻き込みながら当事者化してき、作り上げていきました。
関係の質を高める勉強や、リーダーはコーチングスキル研修を実施したそうです。
下図は、「成功の循環」は、ダニエル・キム氏によって、提唱されたモデルです。より良い組織を生み出すフレームとして、組織開発の実践の中で活用されています。

周囲との関わり方やコミュニケーションといった「関係の質」が高くなると、自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が上がります。
それがメンバーの積極性や主体性といった「行動の質」を高め、成果が生まれて「結果の質」につながります。
このようなことを学びながら、下図の成長実感職場を目指しました。
まずは、コミュニケーションの量を増やし、それによって信頼を増やし、次に社員全員がストレッチな機会を得るためのチャレンジングな目標を設定し、成長を促しました。

メンバーの話を傾聴するような文化のない企業でしたが、1on1によりコミュニケーションが広がりました。
静岡銀行
- 組織課題
- 上司からメンバーへの一方向のコミュニケーションを一因として、チャレンジ精神が失われていた
- なぜ1on1なのか
- プロセス管理とセットで、一方向のコミュニケーションを是正するために、最適な手法だと考えた
- 導入時期
- 2019年
上司が絶対であり、意見具申しにくい文化の銀行。
昔は、商品と顧客のニーズが一致していて、経験豊富な上司の意見が正解となるケースがありました。しかし、年々、顧客のニーズは複雑化し、必ずしも正解はひとつではなくなりました。
上司も答えを持ち合わせない時代です。また、若年層の退職も目立つようになります。
これからは、社員一人ひとりのWILL(意思)が大切になってきました。
社員の自律、若年層の退職の問題を解消すべく1on1を導入しました。「人事で体感→試行(11カ店)→試行(全店)→正式導入」の流れで広げていきました。
最初は半信半疑な人もいましたが、部下の意見を聞くのはよいことかも!という意見も徐々に出てきました。
導入後は、一ヶ月アンケートを採り、フィードバックすることを繰り返しました。
コミュニケーションが同じになるようガイドブックを作成し、トレーニングムービーを作りました。
結果、全体の6割が有用性を感じ、若年層の退職も減ってきました。
以上が他社事例になります。
1on1ミーティング 著者:本間浩輔、吉澤幸太【要約まとめ】
本間浩輔さんは、Zホールディング株式会社の常務執行役員です。
1986年神奈川県生まれ、早稲田大学卒業魚、野村総合研究所に入社。その後、スポーツナビ(現ワイズ・スポーツ)の創業に参画。2002年にヤフー参加になり、スポーツのプロデューサ等を担当。2014年執行役員、上級執行役員、常務執行役員を経て、2019年より現職。
吉澤幸太さんは、ヤフー株式会社 ピープル・デベロップメント統括本部、ビジネスパートナーPD本部の方です。
2005年にサービス企画職としてヤフー似入社。2012年に人事部門へ異動。特に1on1ニーティングの導入と浸透の推進役を担います。ダイヤモンド社をはじめ社外の講師経験も多数。
ブログや本を読むのが面倒な方は、聞き流せるAudibleがオススメ!
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ヤフーの1on1の内容も別記事で解説しています。